大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和39(オ)98 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人原田武彦の上告理由について。

原判決およびその引用する第一審判決の判示によれば、本件委任契約は、被上告

会社と上告会社との間において、被上告会社の資産、負債および名義上は同会社の

代表者D個人のものであるが実質上は被上告会社に帰属する資産、負債の処理を上

告会社に委託することを主たる内容として締結され、右委任事務を処理するため本

件建物について所有権移転登記および引渡がなされたのであるが、被上告会社が本

訴を提起して右委任契約を解除する旨の意思表示をしたので、これにより契約は終

了し、上告会社は被上告会社に対し、本件建物の所有権移転登記の抹消登記手続お

よびその返還をなすべき義務を負う旨認定判断した趣旨であること明瞭である。判

決理由の不明確をいつて原判決を非難する論旨は原判示を正解しないものであり、

失当である。

しかして、本件委任契約のごとく単に委任者の利益のみならず受任者の利益のた

めにも委任がなされた場合であつても、委任が当事者双方の対人的信用関係を基礎

とする契約であることに徴すれば、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえ

ない事由がある場合には、委任者において委任を解除することができるものと解す

るのを相当とする。原判決(第一審判決引用)によれば、上告会社の代表者たるE

は、被上告会社から委託された負債弁済の事務を積極的に処理せず、上告会社の事

業上の差支を避ける限度に、被上告会社の収入をもつて弁済をするのみで、Eが事

実上被上告会社の経営に当つて以来現在まで、合計約六〇四万円の負債を弁済して

いるが、他面、Eおよび上告会社は、被上告会社の収入約六三〇万円を手にしてい

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る状況であつて、委任以来長期間にわたり、収支面において被上告会社に対しなん

ら寄与するところなく、負債の処理はその実があがらず、依然として多額の負債が

残つているというのである。その他原判決が確定した事実関係を総合すれば、本件

は、前示やむをえない事由ある場合に該当するものといわざるをえない。されば、

被上告会社は、右事由に基づき本件委任契約を解除する権利を有するものと解する

のを相当とし、したがつて、被上告会社がした本件解除の意思表示を有効と認めた

原審の判断は、結局、正当といわなければならない。所論のごとく上告会社が誠実

に、かつ、多額の費用を投じて委任事務を処理し、委任の目的は達成されたとの点

は、原審の認定しないところであり、所論は、ひつきよう、原審の認定しない事実

に立脚し、独自の見解に基づいて原審の上記判断を論難するものにすぎない。

論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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